スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ
~時計師の仕事場 #0015~
「表情を大きく変えるデュオトーン・ダイアル」
1950年代前期のデラックス
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~時計師の仕事場 #0015~
「表情を大きく変えるデュオトーン・ダイアル」
1950年代前期のデラックス
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~時計師の仕事場 #0014~
「風格ある佇まいの銀時計」
スミスが英国生産した初の懐中時計
英国デニソン社製の最上級銀無垢ケースの渋い輝き、そして、アイボリーに色づいた盤面に伝統を感じさせるローマ数字が並ぶ文字盤に、青焼針が色を差す。
それらは、製造後、75年以上の歳月を経て来たことで纏った新品以上に魅力的な佇まいであると言えるでしょう。
スミス社が、スイス・ジャガールクルトの技術を投入し設計、生産した15石ムーブメントには、腕時計用と懐中時計用の両方にスイス製の超高級時計などに使われている"コート・ド・ジュネーブ"加工が施されています。
コート・ド・ジュネーブ加工は、光の反射率を利用した巧みな装飾で、ムーブメント表面は、山状になだらかな曲面を描いているように見えます。
しかし、実は目の錯覚を利用しており、ムーブメントの表面は平で、極めて繊細な曲線が彫り込まれているのみなのです。
表面にコート・ド・ジュネーブ加工が施されたムーブメントには、真鍮ベースにニッケル・メッキが施されており内部も美しく仕上げてあります。
工作精度の高い、15石ムーブメントは5ビートであることもあり高い歩度と耐久性を誇っています。
このモデルは、1946年に、スミス初の英国は、イングランドのチェルトナムに建設された、スミス自社工場にて製造されていました。
4ビートの懐中時計は、生産コストを抑えるためウェールズのスミス自社工場にて生産されていましたが、高級機である5ビートは、スイス・ジャガールクルト社の設計技師ロバート・レノア氏をスミス社へ招き入れプロジェクトを立ち上げ、開発から製造までを一貫してイングランドで行うことに成功しました。
この個体は、決して、新品同様の美しさではありませんが、程よいエイジングは、大切に長年使用されてきたことを物語る、とても趣ある佇まいを作りあげています。
文字盤のアイボリー・カラーや銀無垢ケースの酸化、そして、使用キズなどによる、全体的な味がこのモデルにとっての最大の魅力となっています。
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~時計師の仕事場 #0012~
「英国らしさとスミスらしさがここにある」
1955年デュオトーン・ダイアル・デラックス
スミス・デラックスの魅力は過度に主張することなく、上質さと堅実さ、そして、英国らしい控え目なデザインと材質であると言えるでしょう。
9金無垢ケースを使用したフラッグシップ・モデルは、特にその傾向が顕著で、上質な金無垢の中でも、派手さのある輝きを主張した18金ではなく、9金を採用するところは、英国的であるところです。
最も大きな刻印である菱形にBWCとかかれているのは、ホールマークの中でも、メーカーズ・マークと呼ばれているもので、BRITISH WATCH COMPANYというケースメーカーのマークです。
その上の四つの刻印は、このケースをBWC社が製造した際に、エジンバラの税務署が施させたもので、9と・375は共にケースの材質が9金であることを表し、中央左側のお城のマークはエジンバラを、Zはイヤーマークといい1955年を表しています。
つまり、ホールマークは、本来、製造年号を知るために刻印されたものではなく、金、銀、そして、プラチナ製品の課税するため、その製品を製造した際に納税したことの証として、税務署が、暗号化した年号と共に金の含有率を打刻したということなのです。
また、この裏蓋の内側には、多数の数字などが刻み込まれていますが、これらは時計師が整備した際に施したもので、その時計師であれば、その履歴が分かると言う訳です。
数多くの整備履歴のある、ムーブメントの多くは、工具キズと言われる分解、組立を繰り返したことによるキズが見られるものですが、このムーブメントのパーツには、それらが、ほとんど見られない、極めて良い状態を保っています。
そのことから、分かるのは、手を加えた時計師が一流の仕事をしていたことに他なりません。
ビッグベアーでは、スプリングなどの消耗部品の新品交換や、欠陥部品の対策部品交換を含む、スミス専門店ならではの徹底したオーバーホールを行っていますので、工場出荷時の精度と、それ以上の耐久性を備えたムーブメントへと甦らせています。
1950年代の17石ムーブメントは、センターセコンド化したことで増えるギアや軸受けを支えるフレームの増設により、15石とは異なった見ごたえのある設計となっています。
さらに、振り子のチラネジの存在や、骨格部分の真鍮部材に施されたフロステッド・ギルト加工などにより英国的な機能美を感じさせる外観に仕上がっています。
~時計師の仕事場 #0009~
■ ロンドン・ノース・イースタン・レイルウェイズの懐中時計 ■
デッドストック・ムーブメント搭載!
今回、ご紹介する4ビート懐中時計は、戦後間もなくから1940年代に生産され、ロンドン&ノース・イースタン・レイルウェイズのオフィシャル・ポケットウォッチとして使用されていたモデルです。また、4ビート・モデルとしては、最初期モデルにあたる、ニッケルメッキ・ケースの極めてレアな個体です。
頭文字のLNERは、ロンドン・ノース・イースタン・レイルウェイズを意味しており、製品製造後に手描きにて入れられたロゴと考えられます。
この4ビート懐中時計はケースの材質やデザインが1950年代以降のクロームメッキ・モデルとは全く異なっており、真鍮にニッケルメッキが施された温かみのある、ややイエローがかった色彩と細部の趣のあるデザインには、特別な造形美を感じさせます。
また、針のデザインも特徴的で青焼針の質感もブルーの輝きが強く、その個性的なフォルムと共に初期モノならではの雰囲気が漂っています。
ベゼルやケース本体などと同様の、真鍮にニッケルメッキが施された裏蓋には、ロンドン&ノース・イースタン・レイルウェイズを示す「L.N.E.R.」と、シリアル・ナンバーである「3910」の刻印が施されており、この個体がオリジナルであることを示しています。
表面の金色に見える部分は、ポケット内で擦れ、ニッケルメッキが薄くなり真鍮のベースメタルが露出したものです。
竜頭、ネック、そして、リングといった部品も、1950年代のクロームメッキ製とは別物で、造形やメッキなど初期モノならではの味わいを感じ取ることが出来る魅力的な部分です。
極めて個性的なデザインの長短針は、鮮やかなブルーに輝きLNERのロゴと共に、この時計の個性であるといえるでしょう。
製造後、70年以上が経過したことによる自然な経年変化は、新品交換されているレンズとムーブメント以外は、すべてにおいて統一感のある魅力的な佇まいにエイジングしています。
経年によるエイジングは、当然見られますが、どこに目を向けても、オリジナルの部品であることが、この個体の魅力であると言えるでしょう。
戦前のクルマやバイクのメッキに多く使われていた、ニッケリングと呼ばれるニッケルメッキは、クロームメッキよりもやや黄色味が強く、温かみを感じさせる魅力的な色彩であり、この時代ならではの上質な素材感である言えます。
この個体が、英国よりビッグベアーへ届いた時、すでにオリジナルのムーブメントは、1950年代のものに載せ替えられており、そのムーブメントも不動状態となっていました。
そのため、ビッグベアーでは、1960年代末期に生産されたデッドストックムーブメントをオーバーホールし、完璧な状態に整備を行い搭載しました。
外観は、アクリル製レンズ以外は当時の純正部品で構成されているため、その佇まいは、まさに、正しく使われて来た道具としての魅力に溢れています。
しかし、ムーブメントは、デッドストックをオーバーホールした完璧な状態で搭載されているため、日常的に本来の性能を楽しんでいただけるコンディションに仕上がっています。
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