2022年7月18日月曜日

 「ようこそ、スミスの世界へ」

~知らなかったスミスの魅力
その1:手巻式であること



時を刻むための動力は
あなたの指の力


スミスの機械式・手巻腕時計は電池を使いません。針を動かす力は、あなたが竜頭を巻きあげることで、動力ゼンマイに蓄えられるのです。

そして、そのゼンマイのほぐれる反発力が、幾つものギアに伝わり秒針、分針、そして時針を動かします。

その動力は、最後に振り子へと伝わり、正しい時の流れを作り出すのです。






指の力がゼンマイに
蓄えられる


ゼンマイは香箱と呼ばれるギア状の円筒のケースに収められ、その中心は軸に、外周の先端はケース内壁に固定されています。

指で竜頭を巻くことで、ゼンマイの中心に固定された軸を回し、ゼンマイが香箱の中で巻き上げられて行き、その反発力はゆっくりと香箱自体を回転させ、四つのギアとアンクルを経ることで、振り子へと辿り着くのです。







幾つものルビーが
優れた機能と耐久性を生む


ゼンマイに蓄えられた動力は、様々なギアが回転数を変えながら、振り子へ伝達されます。

その間には、時針のギア、分針のギア、そして、秒針のギアが含まれており、その先には、回転運動を往復運動へ変換するための、ガンギ車とアンクルがあり、最後には、振り子があります。

それらのギアなどには必ず軸があり、軸は、軸受けに収まっています。要となる軸受けの素材には、ルビーが使われているのが、上の写真をご覧いただければお分かりいただけるように、赤く見える部品が、ルビーです。

軸には鉄が使用されていますが、その軸を支える軸には鉄以上の硬度が必要となり、鉄よりも固いルビーが採用されているのです。

ムーブメントのスペックに、15石や17石とあるのは、ルビーの数を示しており、装飾ではなく高性能を生むために高価なルビーが使われているところは、正にスミス社が質実剛健で英国的な時計メーカーであることの裏付けと言えるでしょう。






一秒を生み出しているのは
振り子


機械式の時計には、動力ゼンマイ以外にも、ゼンマイが使われており、それが振り子の動きを制御しているヒゲゼンマイです。

振り子は一定方向にだけ回転するのではなく、常に行ったり来たりと向きを変えて動いており、ガンギ車とアンクルによって回転運動が往復運動に変換され、その動作をヒゲゼンマイで制御し、一秒を生み出しているのです。

振り子にもひとつルビーが使われていることが、上の写真でお分かりいただけることでしょう。

また、ルビーの数のほとんどが奇数であることは、軸受けが上下ふたつずつ必要であることに加え、振り子の石がひとつであることが理由なのです。






スミスとの接し方が
変わるかもしれません

竜頭を巻くだけで、毎日、チクタクと正確に時を告げるスミスの手巻腕時計。

しかし、内部では、とても繊細で工作精度の高いメカニズムが、極めて優秀な精度と、耐久性を保ちながら働き続けています。

そんなメカニズムの機能や材質の一部をご理解いただけただけでも、きっとスミスに対する感じ方が変わったのではないでしょうか。

あとは、スミスを実際に手にしていただき、じっくりと時間をかけて、奥深いスミスの魅力に気づいていただけたら幸いです。













2022年7月10日日曜日

  スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~時計師の仕事場 #0019~

「アストラルの最高峰」 

ハック機能付きの、高性能ムーブメント搭載




「英国製スミスの最終形と言って良い、熟成のアストラル」

スミス直系のケースメーカーSCW社製9金無垢ケースに身を纏い、パール調の洗練された英国的な文字盤のデザインは、英国スミス腕時計の完成形といって良い熟成された美しさが際立つ腕時計です。

ムーブメントは、ミリタリーと全く同じハック機構付きのスーパー・クウォリティーを誇る精度、耐久性、そして耐衝撃性にも優れた17石キャリバーが搭載され、正にアストラルの最高峰と呼ぶに相応しいスペックであると言えます。







「パール調の文字盤に赤い影を落とすレッドアロー」

秒針の菱形装飾には、透明なレッドのモチーフが施されており、光を透してパール調の文字盤に赤い影を落としますが、上の画像のように、インデックスの上を通過する瞬間には、その赤い影は、まるでルビーのような輝きを放ちます。

それは、"アストラル"の意味が星の煌めきであることを証明しているかのように感じられる瞬間であると言えるでしょう。







「楔形のインデックスの煌めきを感じながら」

スクウェアーなエッジ形状が美しいSCW社製の、9金無垢ケースの美しさは、言うに及ばず、文字盤に象徴的な印象として配された楔形のインデックスには、深いカッティングが施されており、時を知るたびにその煌めきに目を奪われることでしょう。

美しく、風格のあるケース形状、奥深い色彩を放つパール調文字盤、繊細なレッドアロー、そして、この煌めくインデックスは、極めて高い次元でバランスし、このアストラルが、強さと美しさとを兼ね備えた、正に最高峰の、英国的な美意識を手に入れたことを実感していただけることでしょう。







「ハック機能を手に入れた最高峰のムーブメント」

スミス・アストラルの最高峰であるだけでなく、この時計に搭載されたムーブメントは世界水準においても最高峰の17石手巻きムーブメントであると言えます。

それは、このアストラル・ムーブメントが、世界的にその品質を認められたスミス・ミリタリーに搭載されていることからお分かりいただけることでしょう。

ミリタリーの品質を、アストラルというドレスウォッチで、ご堪能いただけることは、スミスの良心であると言えるのです。







「複雑な裏面は機能と美意識の融合」

幾重にも重なる美しいケース裏面のデザインは、その厚みをミニマムに最適化した17石最終型ムーブメントの優れた設計を、最大限に生かした造形であると言えます。

裏蓋のように見える形状は、ケース本体と一体成型されており、時計を腕に装着した際に、この裏面のふくらみが、全く表には現れず、外周部分のスリムなラインだけが表向きに現れるため、まるで極薄型の時計に見えるという、スリム・ラインの美意識を見事に実現しているのです。





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2022年7月3日日曜日

    スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~時計師の仕事場 #0018~

「19世紀の雰囲気を残す稀少な懐中時計」 

1950年代前期の15石懐中時計


「英国の伝統を受け継ぐ希少モデル」

このスミスを手にすると、頭の中で、1870年代の、竜頭ではなくキーでゼンマイを巻き上げるアンティーク・ポケット・ウォッチと、イメージが重なるように感じます。

その理由は、ケースと針が共に金であり、スミスのロゴだけのシンプルな文字盤であることに加え、文字盤全体に美しいヘアライン(繊細なクラック)が走っているからでしょう。

このスミスは、そんな英国の伝統を受け継いだアンティーク・ウォッチに感じられる美学が込められた稀少モデルなのです。






「細部にまで美しさを追求した造形がある」

このケースには、どこに目を向けても極めて繊細で美しいデザインで形作られた、最上級の工作技術とデザインとが注ぎ込まれています。

例えばアルバート・チェーンを付けるためのリング状の金具は、頂点から終盤までは太く、左右の先端部分に向かい徐々に細くなり、また、そのラインについても、左右対称ではありますが、曲率は常に変化しており、その美しさには目を見張るものがあります。






「当時、10年保証が付いていたケース」

上の画像は、ケース裏蓋の内側を撮影したもので10年間の保証付であることが美しい筆記体で刻まれています。

現代であっても、ケースに10年間の保証が付く例はまずなく、まして、1950年代には極めて異例であったはずで、いかに、剛性や耐久性を重視したデザインであったかを、お分かりいただけることでしょう。

製造後約70年が経過した現在においても、その優れた剛性や耐久性は衰えておらず、フラッグシップ・モデルに相応しいスペックであると言えます。





「時が描いた文字盤のエイジングはこの時計の美しい個性」

エイジングとは経年変化であり、それを一般的にはデメリットとして捉える傾向であると言えるでしょう。

しかし、稀にそのエイジングが、新品時における真っさらな姿よりも、美しいと感じさせ、その時計の個性になり得る場合がります。

この懐中時計の文字盤においては、正にその類稀なエイジングであり、この時計の唯一無二かつ大きな魅力であると言えるでしょう。






「英国製にこだわったスミス社の理念」

文字盤の下部には、MADE IN ENGLAND の文字が誇らしくプリントされており、この懐中時計が英国、イングランド生産であることを示しています。

ご存じのように、英国はユナイテッド・キングダムとも呼ばれ、イングランド、スコットランド、ウェールズ、そして、北アイルランドの連合国なのです。

つまり、文字盤に GREAT BRITAIN ではなく、ENGLAND とプリントされていることには、とても深い意味があり、単に製造された工場の場所を表しているだけではなく、しっかりとした技術と材料を使用して造られた、上質な製品であることを示しているのです。





「長く使える道具としての懐中時計」

10年間の保証が付いていたイングランド製の上質なエクリプス・ケース、やはり、イングランド製の、美しい個性を放つ唯一無二のエイジングを纏った文字盤、そして、英国はイングランドのチェルトナム工場で製造されたムーブメントであることで、MADE IN ENGLAND であると誇れる、この懐中時計は、長く使える優秀な道具として生を受けました。

簡単に手に入り、やがて買い替えられてしまうような製品とは異なる、この懐中時計は、本物の味わい深いデザインと、いつまでも、その機能を保ち続けられる優れた道具として、その価値をお分かりいただける方に使っていただきたいアイテムなのです。

この懐中時計には、スミス純正のデッドストック、アルバート・チェーンが付属いたします。

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