スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ
~時計師の仕事場 #0002~
■フルオリジナルの魅力■
このセットには当時、手元に届いた時と同様の内容が全て含まれています
つまり、スミス社の工場出荷時のフルオリジナルであると言えます
「スミスが目指した理想の姿」
英国より、人気の青焼針デラックスが入荷しました!しかし、そのデラックスの文字盤は、他の青焼針の物とは大きく異なっています。
強い光を受けると、多くの青焼針デラックスのアラビア数字インデックスは、金色に輝くのすが、この最終型の1962年式ブルースチール・デラックスでは、なんと、針同様に数字までもがメタリック・ブルーに輝きます。
これは、スミス社が長年、目指してきた理想の姿であると言えます。そして、光を強く受けない普段の3針とアラビア数字は、他のどのブルースチール・デラックスよりも色濃く、アイボリーの文字盤とのコントラストが際立っています。
「その美しさはデッドストック級」
このモデルは、すべて、BR(イギリス国鉄)のプレゼンテーション・ウォッチに使われており、市販されていませんでした。よって、一度はオーナーである社員の元へ贈呈されたものであり、ほとんどの場合、多少なりとも使用感があることが通常です。
ところが、ほとんど使用されることなく オリジナル・ボックスに入れられ、さらには厚紙製の外箱に収まり、その生涯のほとんどをデスクの引出しで、大切に保管されていました。
そのため、文字盤や針、そしてケースなどに微かなエイジングがあるものの新品に限りなく近いコンディションを保っています。
「R.A.SMARTさんへ贈呈された金時計」
ほぼ新品同様と言えるこのデラックスは、裏蓋の刻印から分かる通り、R.A.SMARTさんへ贈られた時計。
勤め先であるBRを退職した際に贈られた金時計であっただけに、一か月ほど使用したあと、大切にしまい込まれていたそうです。
その後、60年という長い歳月が流れ、新たなオーナーを見つけるために、英国の時計商の元へと託されました。
そして、このデラックスは、空路で海を越え、ウォッチギャラリー・ビッグベアーへ、工場出荷時のコンディションに甦るためにやって来ました。
「60年間の眠りから覚めたムーブメント」 このデラックスのムーブメントは、ビッグベアーに到着した時には、全く動作しない状態でした。 ほぼ、60年間、使用されていなかったムーブメントは、オイルが固着してギアはロックしていました。 全てを分解して、部品を洗浄液につけ込みます。古いオイルやグリスは溶かされて正に、工場出荷時の美しいパーツへと甦ります。 使い古された時計では、こうは行きません。摩耗や錆などによる各部の劣化は、パーツ交換を余儀なくされるからです。 さらに、消耗部品のスプリング類や、スミスの欠陥部品であるボルトスプリングなどは新品交換し、フレッシュなオイルを注油し組立、細部の調整後、充分な動作確認を行い工場出荷時と同等以上の精度と耐久性を取り戻しました。
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