スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ
~時計師の仕事場 #0016~
「スミスが製作したJ.W.ベンソンの腕時計」
1950年代前期のセンターセコンド
「J.W.ベンソンとは」
J. W. Benson (ジェームス・ウィリアム・ベンソン) は1840年代創業のロンドンはオールド・ボンド・ストリートに、そして、晩年はラドゥゲイト・ヒルにショールームを構えていた老舗ジュエラーです。惜しくも1985年頃に店を閉めていますが、彼の白洲次郎氏が愛用していたこともあり、著名な実業家や政治家にも、その愛好家が多いことで知られています。
ベンソン社の時計は主にスイスで生産されていましたが、英国市場のほとんどの製品はチェルトナムに工場を持つスミス社により手がけられており、名実ともに英国製であると言えます。近年では純英国製のベンソンとして、特にスミス社のモデルが注目されています。
ベンソンにおいても、同じことが言え、特にスミス社が生産した英国製のベンソンについては、このベンソンのように秒針の軸が時計のセンターに位置するセンターセコンド・モデルはまずお目にかかることはありませんでした。
その理由は、現代では当たり前のセンターセコンドが、当時は複雑な構造であったからなのです。
ベンソン社の時計は主にスイスで生産されていましたが、英国市場のほとんどの製品はチェルトナムに工場を持つスミス社により手がけられており、名実ともに英国製であると言えます。近年では純英国製のベンソンとして、特にスミス社のモデルが注目されています。
「センターセコンドであること」
この時計が生産されたのは、ムーブメントのシリアル・ナンバーから、1950年代前期と考えられ、その当時における腕時計の秒針は、ほとんどが、6時の位置に秒針ダイアルのあるスモールセコンド・モデルでした。
ベンソンにおいても、同じことが言え、特にスミス社が生産した英国製のベンソンについては、このベンソンのように秒針の軸が時計のセンターに位置するセンターセコンド・モデルはまずお目にかかることはありませんでした。
その理由は、現代では当たり前のセンターセコンドが、当時は複雑な構造であったからなのです。
「ベンソンと共に進化したスミス」
スミスが戦後間もなくにリリースした、初の英国製、高品質腕時計である1215(トゥエルブ・フィフティーン)は、12リーネ・サイズの外径と、15石のルビーを贅沢に使用したことから名付けられたスモールセコンド・モデルでした。
いわゆるスモセコの1215ムーブメントを、センターセコンド・ムーブメントへとコンバージョンしたのが、このベンソンの刻印が施された27・CS(センターセコンドの略)キャリバーでした。
1940年代末期よりベンソン社とスミス社との関係は密接となり、スミス社はベンソン社からの要望を数多く採用していました。
このベンソンのセンターセコンド・ムーブメントの開発以外にも、15石のCタイプ・スモセコ・ムーブメントへ、ルビーの数を増やし、16石や18石としたりと、根本的なコンバージョンを行っており、同時にスミスの自社製品へのフィードバックも積極的に実行しています。
いわゆるスモセコの1215ムーブメントを、センターセコンド・ムーブメントへとコンバージョンしたのが、このベンソンの刻印が施された27・CS(センターセコンドの略)キャリバーでした。
1940年代末期よりベンソン社とスミス社との関係は密接となり、スミス社はベンソン社からの要望を数多く採用していました。
このベンソンのセンターセコンド・ムーブメントの開発以外にも、15石のCタイプ・スモセコ・ムーブメントへ、ルビーの数を増やし、16石や18石としたりと、根本的なコンバージョンを行っており、同時にスミスの自社製品へのフィードバックも積極的に実行しています。
それらは、フラッグシップ・モデルへのグレードアップにも貢献しているため、ベンソン社が品質向上へ傾けていた情熱は、スミス自身の進化と共にあったと言えるでしょう。
「センターセコンドのメカニズム」
センターセコンドは、スモセコよりも見た目がシンプルであるため、メカニズムについても、スモセコよりも簡単な構造であるように思われがちです。
しかし、実際には、6時の位置に秒針の文字盤があるスモセコの方が構造的にはシンプルで、最もベーシックな設計から生まれたデザインであると言えます。
すなわち、センターセコンドは上の写真のようにベーシックなスモセコのムーブメントにギアをふたつ追加することでギアの階層を2階建てとし、6時の位置にあった秒針をセンターへ移しています。
ムーブメント中央に見える小さなギアが、センターセコンドの秒針を動作させており、その軸が、ムーブメントの反対側(文字盤側)へ伸びて、秒針の軸となっています。
つまり、このことに伴いムーブメントはわずかに厚みを増し、ルビーも2石増やされていると言う訳です。
しかし、実際には、6時の位置に秒針の文字盤があるスモセコの方が構造的にはシンプルで、最もベーシックな設計から生まれたデザインであると言えます。
すなわち、センターセコンドは上の写真のようにベーシックなスモセコのムーブメントにギアをふたつ追加することでギアの階層を2階建てとし、6時の位置にあった秒針をセンターへ移しています。
ムーブメント中央に見える小さなギアが、センターセコンドの秒針を動作させており、その軸が、ムーブメントの反対側(文字盤側)へ伸びて、秒針の軸となっています。
つまり、このことに伴いムーブメントはわずかに厚みを増し、ルビーも2石増やされていると言う訳です。
「製造年と異なる裏蓋の年号の理由」
このベンソンの製造年は、上記の解説にもあるように、1950年代前期であると考えられますが、裏蓋に刻まれた年号は1960年であり、5年以上の隔たりがあります。
1930ー1960の意味することは、1930年より30年間勤続した会社から、1960年に退職の記念として贈られた時計であるということです。
つまり、このベンソンを社員へ贈った会社は大企業ではなく、毎年、百人単位の退職者がある訳ではなく、1950年代前期に、プレゼンテーション・ウォッチとして、数年分として、まとまった数の、このベンソン社製腕時計を入手して、毎年、退職者へ送っていたのではないかと考えられます。
1930ー1960の意味することは、1930年より30年間勤続した会社から、1960年に退職の記念として贈られた時計であるということです。
つまり、このベンソンを社員へ贈った会社は大企業ではなく、毎年、百人単位の退職者がある訳ではなく、1950年代前期に、プレゼンテーション・ウォッチとして、数年分として、まとまった数の、このベンソン社製腕時計を入手して、毎年、退職者へ送っていたのではないかと考えられます。
「新品同様と言えるデッドストックのようなコンディション」
上の写真は、オーバーホールの際に撮影した、このベンソンのムーブメントの分解画像ですが、全てにおいて美しく、また、過去のオーバーホール履歴は、英国で一度のみでであることもあり、いかに、このベンソンがの使用頻度が少なかったかが分かります。
「光の当たり方で様々な表情を見せる文字盤」
アルミの地肌を活かしつつも、ヘアライン加工を駆使することで、質感の違いにより表情が様々に変化する、極めて魅力的で美しい文字盤を作り上げられています。
特に、ローマ数字がプリントされているリング状のパートには、同心円の極めて繊細なヘアライン加工が施されており、光の入射角で、濃淡が生れ光がサークル状に走り、極めて美しい奥深さを味わうことが出来ます。
また、光による演出は長短針に施されたブルースチールの青焼加工の効果も同時に味わうことが出来、スミス社の技術力と共に、ベンソンの美意識の高さをご堪能いただくことができるモデルであると言えます。
特に、ローマ数字がプリントされているリング状のパートには、同心円の極めて繊細なヘアライン加工が施されており、光の入射角で、濃淡が生れ光がサークル状に走り、極めて美しい奥深さを味わうことが出来ます。
また、光による演出は長短針に施されたブルースチールの青焼加工の効果も同時に味わうことが出来、スミス社の技術力と共に、ベンソンの美意識の高さをご堪能いただくことができるモデルであると言えます。
この時計の商品ページはこちら