スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ
~時計師の仕事場 #0021~
「自動車の歴史と共に生きて来たスミス」
1954年オースチンのデラックス金時計(second grade)
1905年に創立した英国の自動車メーカー、オースチン社が、創業50周年を迎えた1955年に、25年以上勤続の社員へ贈った金無垢の時計(プレゼンテーション・ウォッチ)のひとつが、この9金無垢ケースのデュオトーン文字盤デラックスです。
英国車のほとんどのメーターを製造していたスミス社は、自動車メーカーとの関係が深く、ローバー、オースチン、モーリス、レイランド、そして、ブリストルなどの大手と呼ばれる自動車メーカーのプレゼンテーション・ウォッチを担っていました。
金無垢ケースの裏蓋には、オースチン社が、創業50周年の記念として、社員へ贈った証が美しく彫り込まれています。
また、贈られた際には、後述のオースチンの紋章入りプレゼンテーション・ボックスが付属していました。
「様々な表情を持つデュオトーン文字盤と金無垢ケース」
また、贈られた際には、後述のオースチンの紋章入りプレゼンテーション・ボックスが付属していました。
「様々な表情を持つデュオトーン文字盤と金無垢ケース」
オースチンのプレゼンテーション・ウォッチとして採用された、このデュオトーン・デラックスの文字盤は質感の異なる表面処理により、光の角度や強弱で様々な表情を見せてくれる極めて奥深い魅力を持ったフェイスに仕上がっています。
また、英国BWC社製の9金無垢ケースは、力強さを感じさせるラグの形状などにより、外径31.8mmと小ぶりな時計でありながら、上品で英国製品らしい存在感を放っています。
また、英国BWC社製の9金無垢ケースは、力強さを感じさせるラグの形状などにより、外径31.8mmと小ぶりな時計でありながら、上品で英国製品らしい存在感を放っています。
「その個体の情報は裏蓋のホールマークで分かる」
金無垢ケースの場合、裏蓋を開けるといくつかの刻印が施されており、それらから、その個体の情報を知ることが出来ます。
上部に3つ三角形を描くように配置されたマークは、9金無垢であることと、1954年に製造されたことを示し、その下の「・375」は、金の純度を、そして、菱形の罫で囲まれた「BWC」はケース・メーカーを表しています。
上部に3つ三角形を描くように配置されたマークは、9金無垢であることと、1954年に製造されたことを示し、その下の「・375」は、金の純度を、そして、菱形の罫で囲まれた「BWC」はケース・メーカーを表しています。
これらのホールマークは、元々、税法上の決まりで、製造時に刻印されていましたが、今では、金の純度や製造年、そして、メーカーを知るための極めて重要な手掛かりとなっています。
「スミス&オースチン純正、革張りボックス」
オースチン社が1955年に社員へ贈ったスミス社製9金無垢デラックスには、オースチンの紋章などが金箔押しされた、革張りのプレゼンテーション・ボックスが付属されていました。
真鍮製のノブを押してボックスを開けると、内部には上質なライニングが施され上蓋の内部には、SMITHS De Luxe のロゴが金箔押しされています。
真鍮製のノブを押してボックスを開けると、内部には上質なライニングが施され上蓋の内部には、SMITHS De Luxe のロゴが金箔押しされています。
いかがでしたでしょうか、メーターを通じて自動車の歴史と共に生きて来たスミス社の、時計メーカーとしての役割をお分かりいただけたでことでしょう。
オースチン車のオーナーに限らず、自動車の歴史と深い関りを持っていたスミス社の時計。そこに、奥深いヒストリックな魅力を感じ取っていただけたのではないでしょうか。
オースチン車のオーナーに限らず、自動車の歴史と深い関りを持っていたスミス社の時計。そこに、奥深いヒストリックな魅力を感じ取っていただけたのではないでしょうか。
今後も、モーリスやローバーなどのプレゼンテーション・ウォッチを取り上げて行く予定です。