スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ
~時計師の仕事場 #0022~
「1950年代スミス15石手巻腕時計のメカニズムを覗く」
分解組立作業から時計の仕組みを知る
Example=1954 Smiths De Luxe
「分解から分かること」
金無垢ケースからムーブメントを取り出し、分解し、すべての部品をチェックしながら、洗浄液につけ込み、ゴミや古いオイル/グリスなどを取り除き、油脂類を施しながら組立ます。
一般的に、この作業を分解掃除(オーバーホール)と呼び、英国ではクリーン&サービスなどと言います。
当時の機械式時計は気密性が低く日常使用することでゴミの侵入は避けることが出来ず、オイルやグリスの寿命は5年と言われているため、オーバーホールは、使用頻度により、必ず2~5年に一度は行わなければ良い状態を保つことができません。
また、分解することで、各部の状態を点検することが出来、消耗部品を交換したり各部の不具合を把握できると言う訳です。
「ゼンマイの動力が振り子へ動力を伝えるまでの仕組み」
このデラックスには、15石の高精度ムーブメントが搭載されていますが、上の写真は、ゼンマイの動力が振り子へ伝わるまでのギアを組んた状態です。一番奥にある大きなギアは、日本では香箱と呼ばれている、内部にゼンマイが収まる筒状のギアです。
香箱自体がゼンマイの反力で回転し、ムーブメント中央の分針に繋がる軸を持つギアを一時間に一回転させ、手前左のインターミディエイト・ギアへ動力を伝え、さらに中央の秒針に繋がる軸を持つギアを一分間に一回転させ、次に、銀色のガンギ車という特殊な形状のギアへと動力を伝えます。
このガンギ車は、その先のアンクルという部品と共に、回転運動を往復運動へ変換させ、その動きは振り子の往復回転運動の動力となり、振り子の正確なリズムが時計全体の動作を制御しているのです。
「指の力を蓄えるゼンマイ」
上の写真は、ゼンマイが収まる真鍮製の香箱の蓋を開けた状態で、筒状のケースの外周にはギアの歯が並んでいるのが分かります。
竜頭を巻き上げることで、軸を回しゼンマイが巻き上げられ、蓄積された指の力が、時計の動力となります。
前述したように、幾つものギアを経て、また、その回転運動が往復運動に変換され、振り子を往復回転運動へと導きます。
前述したように、幾つものギアを経て、また、その回転運動が往復運動に変換され、振り子を往復回転運動へと導きます。
「一秒を生み出すメカニズム」
そして、振り子は、正しい時刻を常に表示させるためのリズムを生み出しています。
つまり、時計の動力系統のすべてのギアは、振り子のリズムに従って一定の秩序を保っていますが、秒針、分針、そして、時針の軸は、異なるギア比によって、60秒、60分、そして、12時間で一回転するように巧みに設計されているのです。
振り子が一秒という正確なリズムを作り出す仕組みを理解しようとするのは簡単ではありませんが、大まかな機械式時計の仕組みを把握していただくと、実際にスミスを日常的に使用した際の親しみが、いっそう深まるのではないかと思います。