スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ
「佇まいで選ぶスミス②」
~高次元でバランスしたエイジングの味、お好きな方にはお薦め!~
使い込まれた、その佇まいが手に馴染む
長年時計師の仕事をしていると、時を知るための道具として、長年、愛用されて来た個体に巡り合うことがあります。
今回入荷しました、このデラックスには、ある意味過酷に使用されたことで生まれる、上質な道具としての味のある佇まいが個体の魅力として感じられます。
腕に着けてみると、特に普段着の質感とも相性が良く、もう長年、自分が使い込んで来たかのように手に馴染みます。
入荷時の状態は不動でしたが…
英国より入荷した時の状態は、ケースの小傷、レンズのくもり、文字盤の経年変化など、長年、日常的に使われて来た状態で、さらに竜頭は巻き上げられているのに振り子は停止状態でした。
しかし、すべての外装パーツは純正品で、ムーブメントは、10年以上は放置されていたようで、完全にオイルが固着していましたが、どこにも部品の不良個所は発見できませんでした。
つまり、使用頻度は極めて高かったと考えられますが、使用中のムーブメントの整備はしっかりと行われていたことが伺えます。
このことは、内部に錆の発生などなければ、適切なオーバーホールを行い消耗部品や欠陥部品を、新品や対策部品に交換することで甦る可能性があることを意味しています。
オーバーホールにより甦ったムーブメント
全てを分解して、ケースを軽く磨いて自然な艶を取り戻し、レンズを新品に交換。文字盤や針は、クリーニングにとどめます。
さらには徹底的なオーバーホールと、ほとんどのスプリングを新品交換、特にゼンマイは耐久性の高い現代のスイス製品に。
スミスの欠陥部品であるボルトスプリングは、当店が国内の時計部品メーカーと共同開発した対策部品に交換することで、新品当時の精度とそれ以上の耐久性を手に入れ、再びしっかりとしたリズムで時を刻み始めました。
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ゴールドプレーテッド加工されたSS製BWCケースとデュオトーンが魅力
多くのゴールドプレーテッド・ケースは真鍮のベースに金メッキ加工が施されますが、このデラックスのケースはステンレス・スチールのベースに金メッキ加工が施されています。
そのためエッジ部分などが擦れて金メッキの層が薄くなると、ステンレスの銀色が薄っすらと現れて、ヴィンテージウォッチらしい、新品とはひと味もふた味も異なる極めてクールな佇まいとなります。
そのためエッジ部分などが擦れて金メッキの層が薄くなると、ステンレスの銀色が薄っすらと現れて、ヴィンテージウォッチらしい、新品とはひと味もふた味も異なる極めてクールな佇まいとなります。
また、デュオトーン文字盤の程良いエイジングは、ケースの佇まいともマッチして、この個体だけが持つ魅力であると言えるでしょう。
光の当たり方で、濃淡が反転するデュオトーン文字盤
上の二枚の画像を比較していただくと文字盤の中央部分と外周部分のデュオトーン(ツートーン)部分の濃淡が反転していることがお分かりいただけると思います。
これは文字盤の中央と外周部分の材質をかえることで、光の反射率が異なることを利用した巧みな装飾であると言えます。
すべてが高次元でバランスした、美しいエイジングの佇まい
程良く使い込まれてゴールドプレーテッドが擦れ、ステンレスの地が微かに顔を覗かせたケース。
長年にわたり使われてきたことで、少しずつ酸化したりと、積み重ねられたエイジングにより表情を変えて来た文字盤や針。
長年にわたり使われてきたことで、少しずつ酸化したりと、積み重ねられたエイジングにより表情を変えて来た文字盤や針。
それらのエイジングが高次元でバランスし、このデュオトーン・デラックスを美しいとさえいえる佇まいに育んできたと言えるのです。
それは、単に古いから、または、使い込まれたから生まれた表情ではなく、材質の良いデラックスだから、そして、正しく使われて来たからこそ纏うことの出来たエイジングなのです。
良い雰囲気に使い込まれた外観と完璧に整備された発売当時以上のクウォリティーとをあわせ持つ、このデラックスのような個体こそ、最高にクールなヴィンテージウォッチらしさに溢れていると考えています。
良い雰囲気に使い込まれた外観と完璧に整備された発売当時以上のクウォリティーとをあわせ持つ、このデラックスのような個体こそ、最高にクールなヴィンテージウォッチらしさに溢れていると考えています。
ヴィンテージらしい佇まいがお好きな方には、また、普段使いには、お薦めのデラックスです。
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