使い込むことによって現れた美しい表情、パティナ
今では、スマホさえあれば、いつでも正確な時間を知ることが出来ます。そのため時計は男性の数少ないファッション・アクセサリーのひとつとして扱われています。しかし、1950年代には、時計は時刻を知るための大事な道具でした。だからこそ、当時は気に入った一本を手に入れたら、肌身離さず長年同じ時計を使い続けたのでしょう。道具として正しく使われ続けた時計には、美しいエイジングが現れます。これを英国人はパティナと呼びヴィンテージ・アイテムの美しい表情ととらえ、その魅力を楽しみます。
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道具は毎日使用されることで、傷ついたり汚れたりします。使用頻度を極端に減らすことで新品に近い状態の時計を、いつまでも変わらぬ美しい状態で保つことは可能です。しかし、毎日使ったことで生まれる使用キズや色あせなどのエイジングは、その個体の個性といえるでしょう。この個体には美しいパティナが宿っているのです。
■バランスの取れたパティナの魅力
新品の時計を、うっかり落としてしまいケースにキズが付いてしまう。他の部分が新品同様に美しく、一箇所だけにキズがあれば、その部分が目立ってしまい修復したくなるものです。しかし、このデラックスのように、どこを見ても同様にエイジングによるヤレが見られると、それはパティナと呼ばれ、長年の歴史を積み重ねてきて生まれた美しさと感じらえるようになるのです。
では、現代の製品も長年の使用を繰り返し時が経てば美しい表情を見せてくれるでしょうか。スマホを始めとした多くの現代製品は、その期待には応えてくれず、塗装が剥がれたり、ケースが割れたりと見苦しくなることが多いということを経験されたことがあるのではないでしょうか。
現代の製品とヴィンテージ製品との差は、その材質にあると考えます。1950年代に生産されたスミス・デラックスは100年先も使われていることを想定して、最も適した材質をケースや文字盤の材料として選んでいたのです。真鍮ベースに金メッキが施されたケースは長年の使用でメッキが擦れて行くことを想定していたため、真鍮のメタルが表に現れても、見苦しい外観にはならず使い込まれた味ととらえることが出来ます。
■パティナを楽しむヴィンテージの魅力
時には落下して付いたキズであっても、また、すり減った金メッキの下から現れた真鍮であっても、それらの集積が、その個体の歴史となり個性となる。そんなことを考えながら、このデラックスを眺めると、極めてバランスの取れたエイジングによる美しいパティナを纏った美しい時計であることに気づいていただけるのではないかと思います。
■裏蓋の状態から分かる前オーナーの思い
このデラックスの裏蓋は、決して新品同様ではありませんが、ヘコミや腐食など見られず、前オーナーが毎日頻繁にではありますが、大事に使用されていたことが伝わってくる状態です。
■裏蓋の内側には地紋
このデラックスの裏蓋を開けると、その内側に地紋が施されているのが分かります。これは、ケースを製造する際の仕上げ加工として施された地紋です。
外観同様にムーブメントも幾度もの整備によりエイジングが見られますが、英国より入荷後、徹底的な整備を行い、工場出荷時の精度と信頼性を取り戻しています。