2017年3月23日木曜日

70歳のスミス婦人



70歳のスミス婦人が到着しました。

恐らく生まれは1947年頃。

しっかりと、毎日、使用されていたことを伺わせる、

全ての箇所にエイジングという証が刻み込まれ、

それでいて、奇跡的に、すべてのパートがオリジナル。



そのフェイスは美しいというよりは、可愛らしいという言葉が似合う。
1940年代の特徴で 文字盤には12の直下にSMITHSのロゴのみが入るとてもシンプルなデザイン。偶数のみのアラビア数字と楔形のアワーマークは立体的に浮彫されて、小さいながらもハイグレード・モデルであることを主張しています。



真鍮に金メッキが施されたカバーとステンレス・スチール製のベースから構成されたケースを開けると、紛れもなく英国チェルトナム工場で製造された精巧なムーブメントが現れる。しかも、それは通常の15石をチューニングした16石キャリバー。このモデルに対するスミスの意気込みを感じさせます。




そして、このレディース・ムーブメント、とにかく小さい。左の写真でお分かりいただける通り、同じく1940年代のスミスのメンズ・ウォッチ、1215のムーブメントと並べてみると、いかにそのサイズが小さいかをご理解いただけるでしょう。充分に精密なメンズと比べると各部品を小型化した上に隙間なく歯車が並べられている様子が分かる。まさに小宇宙!



このレディースの構造は、こんな感じ。上の方に半分ほど見えているのが、かぶせ箱状ケースの身の部分。ステンレス・スチール製で、この中に文字盤をサイドからボルト二本で固定したムーブメントがピタリと隙間なく収まる。そして四角い風防が付いた金メッキの蓋状ケースが被さる。文字盤の6時の下にはMADE IN ENGLANDとプリントされている。


ムーブメントの分解掃除をするために振り子を外してみると、内部の美しさに驚かされる。ケースや文字盤のエイジングとは裏腹に極めて美しく、また、オイルの固着なども一切ない!恐らく近年まで使用し続けられていた個体なのではなかろうか。とても70歳の時計とは思えない状態だ!


オーバーホールを終えて、電子測定器で計測してみると、平置きで+11秒という、驚異的な結果が。この数値は恐らく新品出荷時以上と言えるでしょう。ムーブメントのパーツはもちろん、ケース、レンズ、竜頭そして、ベルトまでもが恐らくオリジナルと思われる、奇跡的なコンディション。
ケース幅:15mm。



使い込まれて、だいぶ草臥れてはいるが、まだまだ使用可能なオリジナルと思われるベルト。こちらも、金具周りの緑青を除去して、革専用のクリーナーでリフレッシュしてあります。





人が生まれ育って行くのと同じように、

このスミス婦人も、

愛され、手入れをされて、

今の趣と佇まいを培ってきた。

ヴィンテージ・ウォッチを手にすること。

それは、あの時代を手に入れると同時に、

時の流れをも感じられること。

そして、新たなヒストリーが始まります。

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