2019年3月9日土曜日

1215「テゥエルブ・フィフティーン」本来の性能


戦後初のスミス高性能腕時計1215のクウォリティー

1910年代よりスミスは、スイスのロンジン社に依頼して腕時計の生産を行い、主にロンドンのストランドにあった本社ショールームでミリタリー・ユースを主眼にしたトレンチ・ウォッチを販売していました。その優れた精度と耐久性は、ロンジン社が生産を行っていたことから、今さら記述する必要はないでしょう。そして、戦後、スミス社は独自の工場で生産した英国製のムーブメント搭載の製品の発売を試みました。その腕時計が今回紹介するジャガー・ルクルト社の技術者を招き入れ設計した1215「テゥェルブ・フィフティーン」です。その生産は英国のチェルトナムに建設されたスミス社のチェルトナム工場で行われ、それまでのSwiss madeに代わり誇らしくMade in Englandと文字盤やムーブメントに記載されるようになりました。

■戦後初のスミス高性能腕時計         質実剛健を形にしたような1215モデル。そのシンプルで飾り気のない、しかし美しいデザインは、ある意味最もスミスらしい腕時計と言えるかもしれません。ニッケル無垢のベゼルとケース本体は表面の一部を梨地に、そしてベゼルとラグの表面及び側面をポリッシュ加工とした、手の込んだ処理が施されています。

■機能性を重んじたデザイン          サイド・ビューに目を向けると、なだらかな美しい曲線で構成された造形は、あくまで機能性に裏付けられたシンプルなデザインで、そこには本当に必要なものだけで築き上げられたデザインの美学を感じ取ることが出来るはずです。また、良く見るとラグのバネ棒取り付け穴も貫通していません。美しさを拘りぬいた結果と言えるでしょう。

■自社製のニッケル無垢ケースケース      裏蓋を開けるとMade in Englandとステンレス製の裏蓋である表記が刻印されています。ステンレスの裏蓋以外のベゼル及びケース本体は、ニッケル無垢製で、ケースメーカーの刻印が無いことから、恐らくスミス自社製のケースであると考えられます。スミス社は戦前にも、極めてクウォリティーの高い自社製ケースを生産していました。

■1215の名前の由来              モデル名である1215はこの美しいニッケルメッキのムーブメントに由来しています。12はムーブメントの直径を表す単位(ライン)で表記すると12となり、15はムーブメントに使用されたルビーの数である15石を表しています。

■1215は正規の名称              当時の雑誌広告やカタログを見ると1215の名前が使われており、文字盤には1215の記載がないものの、正規の名称であったことが分かります。

■様々な1215の存在             1215モデルにはケースや文字盤、そして針のデザインの差によって様々なバリエーションが存在していました。しかしながら、その基本コンセプトは統一されており、一言で言ってしまうと「シンプル」という言葉が最も適切であると言えるでしょう。ラグジュアリー・ブランドのエルメスや英国の老舗ジュエラーJ.W.ベンソンから生産を依頼されたのもこの時代です。

■極めて小さなスモセコも魅力         1215の共通するデザインに、この小さなスモセコを上げることが出来るでしょう。この時代にはセンター・セコンドは存在していませんが、時計のムーブメントの構造上、最もシンプルにセコンド・ダイアルを配置すると必然的にこの6時の位置になると言ことからスモセコであることも1215のデザイン・コンセプトに合致する要素と言えます。


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