2022年3月29日火曜日

 

スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~時計師の仕事場 #0003~

■初代デュオトーン・デラックス■


「1952年デラックス誕生の年に生まれた最初期モデル」

ブルー・スチール、ライン・ダイアルと共に、デラックス御三家として人気の高いデュオトーン・ダイアル。実は3モデルの中では、デュオトーン・ダイアルが最も古く、1952年にデラックスが誕生した年にリリースされています。

文字盤の外周が湾曲した、1950年代中期以降のモデルとは異なり、盤自体はフラットで、サイズもムーブメントと同じ外径の小ぶりな文字盤であることが特徴です。




上の写真は、文字盤をムーブメントに取り付けた状態で、外径は、ほぼ同じです。また、光が強く当たっているため、デュオトーンの外側の方が明るく見えます。



こちらは、通常の室内などで 見える状態を文字盤単体を撮影しました。上の写真と比較すると、見事にデュオトーンの濃淡が反転しているのが分かります。




「オーバーホール」

ムーブメントを分解し、部品を洗浄液につけ込んだ後、組み立てを待つパーツ。各部品は極めて美しく、製造後、約70年が経過していますが、新品状態を保っています。

全ての部品を点検してゴミの付着や摩耗がないかを、丁寧に調べます。この後、可動部にオイルやグリスを注油して、慎重に組み立てて行きます。





「ムーブメントを組み立てたら動作を確認」

組立終わったら、すぐに文字盤や針を取り付けるわけではなく、ムーブメントの状態で、タイムグラファーというテスターで様々なデータを測定します。そして、測定結果により各部の微調整を行い、より安定した精度となるようにします。





「ニッケル・クロームの魅力」

このデュオトーン・ダイアル・デラックスには、ニッケル・クローム無垢のケースが使われています。この素材は戦前より自動車部品等にも使用されており、ヴィンテージ・カーやバイクをお好きな方には馴染み深い合金ではないでしょうか。

メッキとは異なり無垢素材ですので、キズや擦れなどに強く、メッキが剥がれて色が変わってしまうようなことが無いため、いつまでも金属そのものの質感を保つことが出来ます。また、ステンレスなどよりも柔らかい金属で、温かみのある色と質感が魅力です。





「1215譲りの段付き竜頭」

竜頭は真鍮にクロームメッキが施されており、デザインは側面に段の付く凝ったもので、1215時代に使用されていた雰囲気を受け継いでいます。





「美しい刻印が施された裏蓋」

ステンレス・スチール製の裏蓋の表面には、極めて美しい筆記体の社名ロゴとゴシック書体のネームなどがバランスよく施されています。

刻印の入るプレゼンテーション・ウォッチには、主に金無垢が使用されますが、このモデルのようにSS製の裏蓋に刻印が入ることも、少なくはありません。

それだけ、1950年代当時のメッキやニッケル・クローム・ケースのスミス・デラックスには、高い価値があったことを伺い知ることが出来ます。



ニッケル・クロームのケースはさりげなさの中にも上質感を感じることができます




1950年代初期のデラックスにはスミスの良心と英国製品の上質さとが備わっています




ミントにはない、程よく使い込まれた味を末永くお楽しみいただけます


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