2022年4月1日金曜日

 

スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~時計師の仕事場 #0004~

■スミスの礎■



「1215以前のスミス」

スミスが英国の自社工場で生産した腕時計は、1215シリーズから始まったと一般には知られています。しかし1215というシリーズ名がつけられる前に、市販モデルとして、この「スミスの礎」と言えるモデルが存在していました。

それは、戦後間もなくのこと。スイスの名門時計メーカー、ジャガールクルト社から、凄腕設計士のロバート・レノア氏を招き入れ、スミス社の技術陣と共に、様々なプロトタイプが作られ、着々と市販への準備が進められていました。



RGシリーズの雑誌広告(1947年)



そして、1947年に、リリースされたのが外観は後の1215とほとんど変わりませんが、今回、紹介させていただくRGシリーズなのです。





「シリアルナンバーは、初期のCタイプ」

RGシリーズは、1947年より販売が開始され、その生産は1215シリーズに名称が変更される1951年までの約4年間つくり続けられました。そして、1215シリーズとなってからは、RGの名は品番として、例えばRG0513といった形で使われていました。

また、ムーブメントのシリアルナンバーは、このモデルではC16672ですが、改良が加えられる度に、数字だけのナンバーからA、B、C、と続き、デラックスなどにもCで始まる、いわゆるCタイプのシリアルナンバーが続きました。






「RGと1215のウィークポイント」

耐久性についての1215のウィークポイントは、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

1215以前のRGについても同様で、竜頭でゼンマイを巻く際の、指の力をゼンマイに伝えるギアの軸に問題があり、5年以上使用すると、軸が摩耗してギアの回転が偏り、前後を含めた3つのギアに偏摩耗を引き起こすことになります。

Cタイプの初期までは、つまり、このRGにおいても、この問題を抱えており、ギアの軸にすでに摩耗が見られるため、現状のまま販売を行うことは出来ません。



「対策部品で耐久性を確保」


そこで、ビッグベアーでは、対策を施し、安心してご使用いただけるRGモデルに改良を施しています。

その方法は、上の画像に見えるギアとリングと同じ位置に並ぶ、左のプレートの円形の突起物が軸となりますが、初期のCタイプまでは、真鍮素材の軸に、直にギアが取り付けられていました。そのため、長年の使用で、真鍮の軸に摩耗が生じてしまいます。

そこで、その対策として、軸とギアの間にスチール製のリングを入れることで、摩耗を防ぐことが出来るわけです。

つまり、この個体は、対策が施された、ゼンマイのカバープレート、リング、そして、ギアを装着して、対策済の1215モデル以降のデラックスなどと同等の耐久性に改良されているというわけです。



「ムーブメントのシリアルナンバー」

また、ムーブメントのシリアルナンバーは、このモデルではC16672ですが、数字だけのナンバーからA、B、C、と続き、デラックスなどにもCで始まるシリアルナンバー続きました。





「きめ細かい専門店ならではのオーバーホール」

オーバーホールを行う際には、一般の時計店では、持ち合わせていないスミス純正パーツを豊富いストックしているため、妥協することなく不具合のあるパーツをデッドストック・パーツに交換することが可能です。

また、動力スプリングなどの消耗部品は、スイス製のスミスと同規格の現行品と交換しているため、3年間の動作保証を付けることが可能となります。







「コート・ド・ジュネーブの美しさ」

組み上げられたムーブメントは、極めて美しいコート・ド・ジュネーブ仕上げのニッケル・メッキされた表面加工に目を奪われることでしょう。

このムーブメントは、1215中期までのシルバー色系のケースに限られて搭載されていましたので、モデルも限られるため、とても貴重であると言えます。









「この時計の真価を分かる方に」

この、スミス6RGモデルは、1215以前にリリースされた極めて貴重なヒストリカルなモデルです。

しかも、抱えていた欠陥部分を、ビッグベアーにて払拭しているため、単なるコレクションに留まることなく、実際の生活の中で、お使いただくことが出来る耐久性を手に入れています。

この時計の真価をお分かりいただける方に、お持ちいただくことを望んでいます。

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