2022年12月18日日曜日

スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~スミス腕時計のケース材質~ 

3. ゴールド・プレーテッド・ケース



真鍮などをベースに、金をコーティングしたケース

ゴールド・プレーテッドは、聞きなれない方もいらっしゃるかもしれませんが、GPとも表記される時計のケースに多く使用されている材質を表す言葉です。

スミスの場合、一部の例外を除き、真鍮で形造られたダイキャスト製のケースに、電気的に金の薄い膜をコーティングさせています。

金は表面的であるため、金無垢よりも強度に優れ、真鍮よりも耐腐食性に優れているため、剛性の高さと美しさを両立したケースであると言えます。



ゴールド・プレーテッドのメリット

外観は金無垢と同じように金色ですが、金は表面的であるため、金の美しさや、耐腐食性を持ちつつも、地金は真鍮であるため金無垢よりも頑強で、なおかつ、低価格であることは大きなメリットと言えるでしょう。

そのため、時計に貴金属的な価値を求めるのではなく、あくまでも、そのデザインを楽しみながら、英国の優れた機械式時計として使う用途であれば、充分にスミスの魅力を満喫することが出来ます。



ゴールド・プレーテッド・ケースのお手入れ方法

ゴールド・プレーテッド・ケースは、極細目のコンパウンドが染み込ませてある貴金属用の磨きクロスなどで、汚れやクスミ、また、極めて浅い使用キズを取り除くことが可能ですで、適度に磨くことで本来の美しさを保つことが可能です。

しかし、金のコーティングは、20ミクロンほどと、とても薄いため、磨きすぎてしまうと真鍮などの地金が、表面に現れてしまいますので、磨き過ぎには注意が必要です。

また、すでに、金のコーティングが剥がれてしまっていて、地金が真鍮である場合には、金とほぼ同色ですので、真鍮が露出している部分を磨きクロスで磨くことで美しくさを取り戻すことが可能です。



2022年12月1日木曜日

3Years Guarantee
for most smiths watches excluded 4 beat pocket watches



安心の3年間動作保証

ウォッチギャラリー・ビッグベアーのスミスには3年  の長期保証が付帯します
※ 4ビート懐中時計、ストップウォッチ、戦前製品は1年間、デッドストックは初期動作保証

伝統ある正しい英国製品には、長く使用することを前提とした間違いのないデザインと、質実剛健なクウォリティーが、備わっています。

そして、このことは、スミスについても例外ではありません。ウォッチギャラリー・ビッグベアーではヴィンテージ・アイテムだからという妥協はいっさい許さず、ムーブメントに対して新品の製品と同じように動作保証をつけています。


保証が意味するもの


1. 使うためのヴィンテージ・ウォッチ

当時、スミスの時計は、時を知るための毎日使う実用の道具として生まれました。

生産後、数十年が経過した今でも「その目的は変わらない」と、私どもは考えているため「新品当時以上の品質を与えられた個体であること」ことこそが、保証付帯の資格となります。

つまり、保証が意味するものは「当時の新品と変わらぬ品質」であると言えるのです。




2. 短かったスミス社の保証期間

スミス社が保証したのは1年間でした。写真は1954年製造のデラックスと保証書です。

保証期間は「12 months」と記されています。高級時計に対する一年間の保証期間は、現代の常識では少々短いと感じられます。

ウォッチギャラリー・ビッグベアーでは、「デラックスなどの高性能モデルには3年保証」を、「4ビート懐中時計や戦前モデルには1年保証」そして、「デッドストック品には初期動作保証」を設定しています。




3. タイムワープを楽しんで下さい

「精度が悪い」「壊れやすい」「壊れたら直せない」そんな、ヴィンテージウォッチに付きまとう仕方ないと思われていたことの全てをウォッチギャラリー・ビッグベアーでは払拭することに力を注いでいます。

その時代にしかない伝統的なデザイン。そして、機械式ならではの魅力を、思う存分ご堪能下さい。

そして、現代の時計には劣る防水性や耐衝撃性の弱点さえも、数十年前のスタンダードと捉えタイムワープを楽しんで下さい。


快適に末永くご使用いただくために


特性をご理解いただき快適に

古い機械式時計を楽しんでいただくには、その特性をご理解いただき親しんでいただくことが良い方法です。

現代の時計のように防水、防塵、耐衝撃性は残念ながら優れているとは言えません。

しかし、逆に考えると丁寧に優しく接していただければ、電池の入らない究極のエコと言えるスミスは、竜頭をリズミカルに巻けば、チクタクと動き出し実用に困らない精度で時を刻みます。

そして、あなたの人生にいつも寄り添ってくれます。


※動作保証の内容について

■3年間動作保証(腕時計)

安心してご使用いただけますように、ムーブメントに関しましてはお買上いただいた日より3年間の保証をつけさせていただいております。
パーツは充分にストック致しておりますが、場合によっては当時の正規パーツ以外での修理となることがございます。
なお、水分やゴミの浸入、衝撃を加えたりした場合、また、竜頭の巻過ぎ、分解などされた場合は保証の対象外となりますのでご了承下さい。



■1年間動作保証(懐中時計)

安心してご使用いただけますように、ムーブメントに関しましてはお買上いただいた日より1年間の保証をつけさせていただいております。
パーツは充分にストック致しておりますが、場合によっては当時の正規パーツ以外での修理となることがございます。
なお、水分やゴミの浸入、衝撃を加えたりした場合、また、竜頭の巻過ぎ、分解などされた場合は保証の対象外となりますのでご了承下さい。



初期動作保証(デッドストック)

デッドストックであることと、完璧な動作を示すことで、こちらの製品はオーバーホールをさせていただいておりません。

お手元に届いた時までの初期動作保証のみとなります。

実用に使われるなどで、事前にオーバーホールをご希望の場合は、お申し付けいただければ19,900円にてオーバーホールを行わせていただきます。

※ダイバーズ・ウォッチやクロノグラフなどは、オーバーホール料金が異なりますので、お問い合わせください。




2022年11月21日月曜日

  スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~Smiths Life Style #0003

「BarbourとSmithsの相性の良さ」
その1




「バブアーもスミスも、英国のスタンダード」

バブアーは言わずと知れた、英国の伝統的な防水性能が特徴のアウトドア・ウェアーですが、その古典的なオイルド・コットンという手法は、日本においては、一般に普及するまでには長い時間を要する特殊なウエアーのひとつであると言えるでしょう。

私が、バブアーの魅力に惹かれて、全天候型のアウトドア・ウェアーとして着用し始めたのは1990年代の初頭に英国のプレスコット・ヒルクライム観戦に出かけた時から。英国の天気はとても変わりやすく、朝に晴れていても、突然、雨が降り始めることがいつものこと。しかし、ヒルクライム観戦では傘をさしたくない。つまり、英国のスタンダードであるバブアーとハンチングが必要となる。

そして、英国のスタンダードと言えるスミスとの相性も素晴らしく、バブアー・ビデイルとスミス・1215とを身に着けた日本人を見て、彼らは、喜んで、「ベリー・イングリッシュ!」と声をかけて来たことを思い出す。




「どちらにも共通したテイストがある」

そんな、バブアーとスミスには、普遍的な共通点があり、そのことが根源的にお互いを引き立ててくれる。つまり、どちらも、質実剛健な優れたギアであると同時に、とても英国的なアイテムであるといえる。

元々、ドレス・ウォッチであった、スミスが、アウトドア・ウェアーのバブアーと相性が良いとは、不思議に思われるかもしれないが、元々、彼らは、バブアーの下に、スーツとネクタイを着込むことを好んでいるのだから、何の不思議もないと言う訳。

現代の日本であれば、そこまで英国紳士を気取る必要はなく、カジュアルに着こなしていただくのも良いと思う。




「スミスであればどのモデルでもバブアーに似合う」

最近、バブアーに合わせるにはどのモデルが良いだろうかと、尋ねられることが多く、そんなときには、どのモデルでもスミスであれば、バブアーに良く似合う。そう答えて問題はなくて、それが優れた英国製品というもの。





「自由なスタイルで楽しんでいただきたい」

バブアーとスミスを合わせるからと言って、全身、英国製品で固める必要は全くありません。自分の個性を自由なスタイルで作り上げていただく。そんな、懐の深さも、バブアーとスミスが持ち合わせている性格なのですから。ぜひ、楽しんでいただきたい。




■スミスの商品ページ■
アストラル(左)はこちら
アストラル(中央)はこちら
デラックス(右)はこちら






2022年11月10日木曜日

  スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~Smiths Life Style #0003

「いつもの日々にスミスが加わるということ」
その3


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「スミスの時計は、英国のスタンダード」

スミス社のデラックスやアストラルなどを代表とする高品質ウォッチは、スイスのジャガールクルト由来の極めてハイクウォリティーな英国生産のメカニズムと、古き佳き英国のエッセンスが凝縮されたような優れたデザインが、英国のスタンダードとして長きに渡り愛され続けています。

そんな、すべてが英国そのものと言えるスミスを、日常に取り入れるということは、英国を手に入れたことに他なりません。




「普段着に合わせても主張しない」

スは、そのサイズ感や控え目なデザインが、過度な個性を嫌う英国らしく、特に現代のファッションには普段着であっても上品に馴染んでくれます。


全てを英国製で揃えなくとも、スミスを腕に着けているという、それだけで、主張過ぎることなく、全体を英国的なセンスにまとめ上げてくれるのです。






「そのひと手間が趣味の世界へと誘う」

スミスのほとんどのモデルは、手巻式です。そのため使う時には、竜頭を巻いてゼンマイに動力を蓄えたり、時刻を合わせる必要があります。

反面、電池交換の必要はなく、半永久的に使用できるのです。

竜頭を巻くという、そのひと手間こそが、時間を知るための道具以上の趣味性の高い楽しみとなり、そこから、さらなるヴィンテージ・ウォッチの世界へとあなたを誘ってくれるのです。




「1950年代の英国をお楽しみいただけます」

初めて、ヴィンテージ・アイテムを手に入れる方にとっては、毎日使うと壊れてしまうのではないかといった不安から、実用の時計としてお使いいただけないと感じてしまうことがあるかもしれません。

しかし、ビッグベアーのスミスは、外観の美しさや、ヴィンテージウォッチならではの味わい深い風合いはもちろんですが、ムーブメントをスミスの工場出荷時と同等以上のコンディションに仕上げ、さらに3年間の動作保証付ですので、いつもの生活に、安心して加えていただくことが出来ます。

あなたの生活に、英国製ヴィンテージ・ウォッチであるスミスが加わること。ただそれだけで、古き佳き英国を手に入れたような喜びが、そして、いつもの日常に、今までなかった楽しみが加わることでしょう。

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2022年11月9日水曜日

   スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~時計師の仕事場 #0022

「スミスは英国のバランス感覚」 

1959年青焼針のデラックス金時計 SALE!!


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優れた英国製品には、そのデザインにおいて固有のバランス感覚が存在します。それはスミスにおいても例外ではありません。

とくに、この青焼針の9金無垢デラックスにおいては、それが顕著に表れていることが、はっきりとわかります。

なんとも美しい佇まいのこのデラックスには、もちろん伝統的な手法であるブルースチール・ハンズやスモール・セコンド・サブサイダリー・ダイアルなどが、効果的に採用されていることによるところが大きいと言えるでしょう。

しかし、最も重要なのは、それらの魅力的な要素が、バランスよく配置されデザインされていることに他なりません。





「完璧に調和した文字盤のデザイン」

文字盤のデザインを色彩に惑わされることなく設計という観点から考察するために、画像の色を取り去り、1950年代に文字盤の設計士がドラフターに向かった時と同じように、モノクロームの世界に足を踏み入れてみましょう。

通常、アラビア数字はやや大きめに、そして分刻みのインデックスに近い位置に配置されるでしょう。しかし、このモデルの場合、あえて小さめな数字とし、分刻みのインデックスとの間に適切なスペースを与えています。

つまり、本来存在している12個のアラビア数字は、必然的に中央によって配置されることになります。その結果、スモセコ・ダイアルは、切削加工により6のすべてと、5と7の数字を一部削り取ることになります。

このことは、一見、美しく並んだアラビア数字のデザインを壊しているように感じられるかもしれません。しかし、スモセコ・ダイアルが縮こまることなく文字盤の中に調和するという好結果を生み出しているのです。





「英国的な美学が凝縮されたマスターピース」

以上のデザイン的なからくりをご理解いただいた上で、改めて、このデラックスをご覧いただくと、この時計がいかに秀逸なデザインであるかをお分かりいただけることと思います。

小さな文字盤の中に散りばめられた、数々のデザイン・エレメンツのそれぞれがお互いを引き立てる距離感で配置され、伝統に裏付けられた上品かつ趣ある佇まいを構築しているのです。そこには、英国的な美学が凝縮されていることを見て取るこことが出来るでしょう。

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2022年11月4日金曜日

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~Smiths Life Style #0002

「いつもの日々にスミスが加わるということ」
その2



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「スミスの時計は、英国のスタンダード」

スミス社のデラックスやアストラルなどを代表とする高品質ウォッチは、スイスのジャガールクルト由来の極めてハイクウォリティーな英国生産のメカニズムと、古き佳き英国のエッセンスが凝縮されたような優れたデザインが、英国のスタンダードとして長きに渡り愛され続けています。

そんな、すべてが英国そのものと言えるスミスを、日常に取り入れるということは、英国を手に入れたことに他なりません。




「普段着に合わせても主張しない」

スは、そのサイズ感や控え目なデザインが、過度な個性を嫌う英国らしく、特に現代のファッションには普段着であっても上品に馴染んでくれます。


全てを英国製で揃えなくとも、スミスを腕に着けているという、それだけで、主張過ぎることなく、全体を英国的なセンスにまとめ上げてくれるのです。




「そのひと手間が趣味の世界へと誘う」

スミスのほとんどのモデルは、手巻式です。そのため使う時には、竜頭を巻いてゼンマイに動力を蓄えたり、時刻を合わせる必要があります。

反面、電池交換の必要はなく、半永久的に使用できるのです。

竜頭を巻くという、そのひと手間こそが、時間を知るための道具以上の趣味性の高い楽しみとなり、そこから、さらなるヴィンテージ・ウォッチの世界へとあなたを誘ってくれるのです。



「1950年代の英国をお楽しみいただけます」

初めて、ヴィンテージ・アイテムを手に入れる方にとっては、毎日使うと壊れてしまうのではないかといった不安から、実用の時計としてお使いいただけないと感じてしまうことがあるかもしれません。

しかし、ビッグベアーのスミスは、外観の美しさや、ヴィンテージウォッチならではの味わい深い風合いはもちろんですが、ムーブメントをスミスの工場出荷時と同等以上のコンディションに仕上げ、さらに3年間の動作保証付ですので、いつもの生活に、安心して加えていただくことが出来ます。

あなたの生活に、英国製ヴィンテージ・ウォッチであるスミスが加わること。ただそれだけで、古き佳き英国を手に入れたような喜びが、そして、いつもの日常に、今までなかった楽しみが加わることでしょう。

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2022年10月26日水曜日

   スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~Smiths Life Style #0001

「いつもの日々にスミスが加わるということ」 
その1




「スミスの時計は、英国のスタンダード」

スミス社のデラックスやアストラルなどを代表とする高品質ウォッチは、スイスのジャガールクルト由来の極めてハイクウォリティーな英国生産のメカニズムと、古き佳き英国のエッセンスが凝縮されたような優れたデザインが、英国のスタンダードとして長きに渡り愛され続けています。

そんな、すべてが英国そのものと言えるスミスを、日常に取り入れるということは、英国を手に入れたことに他なりません。




「普段着に合わせても主張しない」


スは、そのサイズ感や控え目なデザインが、過度な個性を嫌う英国らしく、特に現代のファッションには普段着であっても上品に馴染んでくれます。


全てを英国製で揃えなくとも、スミスを腕に着けているという、それだけで、主張過ぎることなく、全体を英国的なセンスにまとめ上げてくれるのです。






「そのひと手間が趣味の世界へと誘う」

スミスのほとんどのモデルは、手巻式です。そのため使う時には、竜頭を巻いてゼンマイに動力を蓄えたり、時刻を合わせる必要があります。

反面、電池交換の必要はなく、半永久的に使用できるのです。

竜頭を巻くという、そのひと手間こそが、時間を知るための道具以上の趣味性の高い楽しみとなり、そこから、さらなるヴィンテージ・ウォッチの世界へとあなたを誘ってくれるのです。




「1950年代の英国をお楽しみいただけます」

初めて、ヴィンテージ・アイテムを手に入れる方にとっては、毎日使うと壊れてしまうのではないかといった不安から、実用の時計としてお使いいただけないと感じてしまうことがあるかもしれません。

しかし、ビッグベアーのスミスは、外観の美しさや、ヴィンテージウォッチならではの味わい深い風合いはもちろんですが、ムーブメントをスミスの工場出荷時と同等以上のコンディションに仕上げ、さらに3年間の動作保証付ですので、いつもの生活に、安心して加えていただくことが出来ます。

あなたの生活に、英国製ヴィンテージ・ウォッチであるスミスが加わること。ただそれだけで、古き佳き英国を手に入れたような喜びが、そして、いつもの日常に、今までなかった楽しみが加わることでしょう。

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2022年9月3日土曜日

  スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~時計師の仕事場 #0021

「自動車の歴史と共に生きて来たスミス」 

1954年オースチンのデラックス金時計(second grade)



1905年に創立した英国の自動車メーカー、オースチン社が、創業50周年を迎えた1955年に、25年以上勤続の社員へ贈った金無垢の時計(プレゼンテーション・ウォッチ)のひとつが、この9金無垢ケースのデュオトーン文字盤デラックスです。

英国車のほとんどのメーターを製造していたスミス社は、自動車メーカーとの関係が深く、ローバー、オースチン、モーリス、レイランド、そして、ブリストルなどの大手と呼ばれる自動車メーカーのプレゼンテーション・ウォッチを担っていました。





「オースチンである証」

金無垢ケースの裏蓋には、オースチン社が、創業50周年の記念として、社員へ贈った証が美しく彫り込まれています。

また、贈られた際には、後述のオースチンの紋章入りプレゼンテーション・ボックスが付属していました。





「様々な表情を持つデュオトーン文字盤と金無垢ケース」

オースチンのプレゼンテーション・ウォッチとして採用された、このデュオトーン・デラックスの文字盤は質感の異なる表面処理により、光の角度や強弱で様々な表情を見せてくれる極めて奥深い魅力を持ったフェイスに仕上がっています。

また、英国BWC社製の9金無垢ケースは、力強さを感じさせるラグの形状などにより、外径31.8mmと小ぶりな時計でありながら、上品で英国製品らしい存在感を放っています。





「その個体の情報は裏蓋のホールマークで分かる」

金無垢ケースの場合、裏蓋を開けるといくつかの刻印が施されており、それらから、その個体の情報を知ることが出来ます。

上部に3つ三角形を描くように配置されたマークは、9金無垢であることと、1954年に製造されたことを示し、その下の「・375」は、金の純度を、そして、菱形の罫で囲まれた「BWC」はケース・メーカーを表しています。

これらのホールマークは、元々、税法上の決まりで、製造時に刻印されていましたが、今では、金の純度や製造年、そして、メーカーを知るための極めて重要な手掛かりとなっています。







「スミス&オースチン純正、革張りボックス」

オースチン社が1955年に社員へ贈ったスミス社製9金無垢デラックスには、オースチンの紋章などが金箔押しされた、革張りのプレゼンテーション・ボックスが付属されていました。

真鍮製のノブを押してボックスを開けると、内部には上質なライニングが施され上蓋の内部には、SMITHS De Luxe のロゴが金箔押しされています。

いかがでしたでしょうか、メーターを通じて自動車の歴史と共に生きて来たスミス社の、時計メーカーとしての役割をお分かりいただけたでことでしょう。

オースチン車のオーナーに限らず、自動車の歴史と深い関りを持っていたスミス社の時計。そこに、奥深いヒストリックな魅力を感じ取っていただけたのではないでしょうか。

今後も、モーリスやローバーなどのプレゼンテーション・ウォッチを取り上げて行く予定です。




















 

2022年8月31日水曜日

スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~時計師の仕事場 #0022

「1950年代スミス15石手巻腕時計のメカニズムを覗く」 

分解組立作業から時計の仕組みを知る


Example=1954 Smiths De Luxe





「分解から分かること」

金無垢ケースからムーブメントを取り出し、分解し、すべての部品をチェックしながら、洗浄液につけ込み、ゴミや古いオイル/グリスなどを取り除き、油脂類を施しながら組立ます。

一般的に、この作業を分解掃除(オーバーホール)と呼び、英国ではクリーン&サービスなどと言います。

当時の機械式時計は気密性が低く日常使用することでゴミの侵入は避けることが出来ず、オイルやグリスの寿命は5年と言われているため、オーバーホールは、使用頻度により、必ず2~5年に一度は行わなければ良い状態を保つことができません。

また、分解することで、各部の状態を点検することが出来、消耗部品を交換したり各部の不具合を把握できると言う訳です。







「ゼンマイの動力が振り子へ動力を伝えるまでの仕組み」

このデラックスには、15石の高精度ムーブメントが搭載されていますが、上の写真は、ゼンマイの動力が振り子へ伝わるまでのギアを組んた状態です。一番奥にある大きなギアは、日本では香箱と呼ばれている、内部にゼンマイが収まる筒状のギアです。

香箱自体がゼンマイの反力で回転し、ムーブメント中央の分針に繋がる軸を持つギアを一時間に一回転させ、手前左のインターミディエイト・ギアへ動力を伝え、さらに中央の秒針に繋がる軸を持つギアを一分間に一回転させ、次に、銀色のガンギ車という特殊な形状のギアへと動力を伝えます。

このガンギ車は、その先のアンクルという部品と共に、回転運動を往復運動へ変換させ、その動きは振り子の往復回転運動の動力となり、振り子の正確なリズムが時計全体の動作を制御しているのです。





「指の力を蓄えるゼンマイ」

上の写真は、ゼンマイが収まる真鍮製の香箱の蓋を開けた状態で、筒状のケースの外周にはギアの歯が並んでいるのが分かります。

竜頭を巻き上げることで、軸を回しゼンマイが巻き上げられ、蓄積された指の力が、時計の動力となります。

前述したように、幾つものギアを経て、また、その回転運動が往復運動に変換され、振り子を往復回転運動へと導きます。






「一秒を生み出すメカニズム」

そして、振り子は、正しい時刻を常に表示させるためのリズムを生み出しています。

つまり、時計の動力系統のすべてのギアは、振り子のリズムに従って一定の秩序を保っていますが、秒針、分針、そして、時針の軸は、異なるギア比によって、60秒、60分、そして、12時間で一回転するように巧みに設計されているのです。

振り子が一秒という正確なリズムを作り出す仕組みを理解しようとするのは簡単ではありませんが、大まかな機械式時計の仕組みを把握していただくと、実際にスミスを日常的に使用した際の親しみが、いっそう深まるのではないかと思います。

2022年8月26日金曜日

  スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~時計師の仕事場 #0020~

「この個体にしかない魅力とは」 

1957年青焼針のデラックス 





「ここまで使い込むのは難しい」

このデラックスを始めて目にした時の、第一印象は、エイジングのクールな佇まい以外の何物でないと言えるでしょう。

金無垢のデニソンケースが、青く輝くブルースチールハンズが、という以前に、まぎれもなくこの個体にしか存在しない、見事とまで言える美しいエイジングが視線を釘付けにしてしまうに違いありません。







「エイジングとは」

ひとことにエイジングといっても、その種類は、千差万別。日の光や湿気、そして、空気中のに含まれる酸素を始めとした様々な物質が、長い歳月の経過によりもたらす、いわゆる経年変化のこと。

しかし、それらは、ケースや、文字盤、そして、針などの材質により必ずしも同じような結果が現れるわけではありません。

艶のないアイボリー色の文字盤には、こんがりと日焼けしたかのように、そして、青焼針には酸化にによる微細な化学反応が蓄積され固有の表情を作っています。





「歳月によって生まれた美しさ」

このデラックスの文字盤には、金メッキされた浮彫のアラビア数字インデックが施されているため、その個々の数字の周辺は他よりも、やや、色濃くエイジングが進むという特性があります。

このことが、より一層この文字盤に趣深いエイジングを生み出し、人工的ではない、自然現象的な美しさを作り出しています。

それは、保管状態や使用環境など、極めて多くの要因が60年以上の時と共に影響し合い育んできた佇まいであると言えます。





「正しく使われ、整備されて来た証」

ムーブメントを分解してみることで、このデラックスが、いかに正しく使われ、そして、優れた時計師の手によりメンテナンスされて来たかが分かります。

全ての部品は極めて美しく、偏摩耗などが一切なく、消耗部品も定期的に交換されてきたことが分かります。





「剛性の高いフレーム構造は英国的」

スイス製の見せるムーブメントとは大きく異なる、高い剛性を重視して設計されたスミスのCタイプ15石キャリバー。

質実剛健なその設計思想は、メンテナンスを怠らなければ半永久的に使用可能な極めて英国的なムーブメントであると言えます。




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