2026年3月13日金曜日

  スミス専任時計師の店主による

「スミスのブログ」
  新入荷のスミス❸

 「ワッフル文字盤と防水ケース」
 アストラルのレアモデルが入荷!

懐古趣味的なデザインのアストラル

シンプルでスタイリッシュなデザインが多い、「星の煌めき」という意味を持つアストラルの中では異端といえるモデルが入荷しました。

1950年代のテイストを全面に取り入ているものの、機能的にはウォータープルーフ、ショックプルーフ、そしてアンチマグネティックまでもを装備した先進的な一本です。



いにしえの佇まい

ワッフル文字盤に、浮彫のアラビア数字、夜光塗料、そして、極め付きはキャンディー塗装のレッドアローと、この1960年代アストラルには、1950年代のモデルに見られるデザインエレメンツが満載されています。


程良く使い込まれたクロームプレーテッドケースの風合いとともに「いにしえの佇まい」が宿っています。また、レンズとベルト以外は、フルオリジナルの外装部品で構成され、純正度合いが高い極めて貴重な一本です。

もちろん、スミスの欠陥部品、ボルトスプリングはビッグベアーオリジナルの対策部品に交換されており、動力ゼンマイを始めとするスプリングなどの消耗部品は新品にリフレッシュされ、発売当時の精度と、それ以上の耐久性を誇ります。



巻心地の良い純正竜頭

竜頭は通常のスミス用とは異なる形状とサイズ感で、このアストラルがウォータープルーフ(防水ケース)であることがひと目でお分かりいただけるでしょう。


その巻き心地は滑らかで、この時代の防水ケースに多く採用されたデザインは、スミス純正竜頭であることの証です。



スナップオン式の裏蓋

通常、スミスの防水ケースは、スクリュー式で、ねじ込み式構造となっていますが、このアストラルはスナップオン式と呼ばれる圧入タイプの裏蓋が採用されています。


ケース本体と裏蓋の間にはパッキンが備わっており、専用工具で裏蓋を圧入いたします。ねじ込み式とは異なり簡易的ではありますが、生活防水としては充分な効果を発揮し、そのことは下の画像をご覧いただければ、ムーブメントの美しさから納得できるでしょう。



パッキンが守りぬいたムーブメント

黒いゴム製パッキンがケース本体と裏蓋との間に挟まれ、竜頭内部のゴムパッキンと共にこのムーブメントを水分やゴミの侵入から約60年間守りぬいたことが、ムーブメントの美しさからお分かりいただけることでしょう。


さらに、振り子には耐震機構と非帯磁機構とが備わり、日常使用における安心感に大きく貢献しています。



正しく使われてきた個体を最良の状態に

ヴィンテージウォッチは平たく言ってしまえば中古品であることに変わりありません。そのため、いかに正しく使われてきた個体を選ぶかがとても重要な鍵となります。


ビッグベアーでは、外観に関しては、スミス本来の部品が使用されていることを第一に、そして、ムーブメントに関しては、良い整備士のメンテナンスを受け、正しく使われてきたこと、つまり各部が消耗していないことを第一に考えています。

このアストラルの場合は、最も劣化しやすい、アクリル製のレンズとベルトについては当時と同じ素材とサイズの現代の新品に交換し、クロームプレーテッドのケースはヴィンテージ感ある愛着の持てる使用感を残しつつ、摩耗のほとんど無いムーブメントは、欠陥部品および消耗部品などの交換を行い各部のバランス取りを済ませた、3年間動作保証を付けられる状態に仕上げています。



スミスの工場出荷時の精度とそれ以上の耐久性

このアストラルが生まれた1960年代にも、スミス社は動作保証を1年間付帯していましたが、時代と共に、製品の保証期間は伸びてきています。


そのことにより、ご使用いただく方の安心感が増し、万一のときのご負担を最小限に減らすことが可能となります。

ビッグベアーでは、現代の製品と同等の3年間の動作保証を付帯し、当時のスミスを大幅に上回る安心感と共にスミスをお使いいただけるよう努力してまいりました。

そのために、私どもは1960年代よりも良質な油脂類を使用し、消耗品の新品交換を始めスミスの欠陥部品とされているボルトスプリング(裏押さえ)の問題を、日本の一流時計部品メーカーと共同開発で対策部品を製作し解決しています。




2026年3月3日火曜日

 スミス専任時計師の店主による

「スミスのブログ」
  新入荷のスミス❷

 「ホーンラグと段付文字盤」
 1950年代の英国で人気を博したモデルが初入荷!

初期モデルならではの魅力

1851年創業のスミス社が、自社工場を英国イングランドのチェルトナムに建造し、Made in Englandの腕時計を生産し始めたのは第二次世界大戦後、間もなくのこと。

今回、紹介するスミスは1952年から1954年まで生産された、動物のツノのような形状のホーンラグと段付きと呼ばれるアラビア数字が並ぶエリアのみ一段下がった文字盤を持つ、英国で大人気の初期物デラックスです。


1215からデラックスへ

戦後初のスミス社製高級時計として登場したのは、上の写真左端の1215モデル。SMITHSのロゴのみの表記でモデル名は記されていませんでした。


そして、その1215モデルの後継として1952年より登場したデラックスモデルは、1965年頃まで極めて多くのデザインで生産されていました。

今回入荷した「ホーンラグと段付き文字盤」のデラックスの生産は1952~1954年に集約されており、その後は、1961年モデルに見られるような、スタンダードなラグのモデルが主流となりました。




地味な細工で大いなる味を手にいれる英国の技

スミスの戦後に製造された高級時計は、デザインから生産までの殆んどの工程をイングランドのチェルトナム工場で行っており、文字盤やケースのデザインやムーブメントの設計は、極めて英国的な手法で行われていました。


そこには、派手な装飾や必要以上の豪華さを好まない英国人の国民性が息づいており、このデラックスの段付き文字盤からも分かるように、地味な細工が見るものにとても赴き深い大いなる味を感じさせる英国の技といえるのです。


伝統の青焼針も健在

1215から受け継いだツノ型の個性あふれるラグ形状と共に、細い青焼針にもスミスならではの伝統を感じることでしょう。


1215からデラックスへとモデル名が変わっても、先代が築き上げた伝統的な手法を活かしつつ新たなジェネレーションへとアップデイトさせるところは、とても英国的といえるでしょう。



基本をかえない小さなことの積み重ねが熟成を生む

1215からデラックスへとモデルが変わっても、スミスであることに変わりない安心感は、地味な変更の積み重ねにとどめることで守り続けられて来たのです。


また、その積み重ねは、外観のデザインに留まることなく基本設計を変えないムーブメントの小まめな改良にも及び、精度や耐久性の熟成にも貢献しています。



質実剛健のスピリッツが宿った改良型ムーブメント

戦後初の1215ムーブメントでは、真鍮ベースの骨格にスイスの時計によく使われるコートドジュネーブという手の込んだスミスとしては、ややオーバークウォリティーともいえる表面加工がニッケルプレーテッドと共に施されていました。


デラックスに搭載されたムーブメントは、1215で採用されていたコストのかかる豪華な装飾を廃止し、さらに、1215の構造的な問題点を払拭。本来の英国的な質実剛健のスピリッツが宿った外観をフロステッドギルト加工にとどめた改良型にアップグレードされています。



品質を裏付けるエンジンターンド加工

ステンレス スチール製の裏蓋には丁寧なエンジンターンド加工が見た目にも美しく
、高品質な機械加工による製品であることを裏付けています。




裏蓋の表面にも高品質の証が

ステンレス スチール製の裏蓋には、外側にも丁寧な切削加工技術による仕上がりが見られ、デラックスの名に相応しい高品質の証を視覚的に感じることが出来ます



細部の造型にも感じられるこだわり

アクリル製レンズを支えるリング状のベゼルは裏蓋と同じステンレス スチール製ですが、こちらはポリッシュ仕上げでホーンラグの表面と質感を揃えていることが分かります。

また、ホーンラグケースの側面にはヘアライン加工が施され、質感の違いが凝ったデザインの竜頭と共に、このケースの上質感を高めています。



母国で高い評価を受けたデラックス

スミス史上初のMade in Englandの高品質腕時計である1215をベースに、構造的な問題点を払拭し、さらに、デザインにも熟成を重ねて生まれたこのデラックス。


英国の伝統が生み、英国のクラフツマンシップにより熟成され、そして、英国人により愛された、この「ホーンラグと段付き文字盤」の1952~1954年に生産された初期物デラックスを味わっていただきたい。

このデラックスの商品ページはこちらから。






2026年2月15日日曜日

 スミス専任時計師の店主による

「スミスのブログ」
  新入荷のスミス❶

 「魅惑の青焼針」
 正しく使い込まれ、育った個体が入荷!


青焼針の魅力

青焼針は、戦前の懐中時計に多く使われていた伝統的な技法で、工芸品ともいえる高度な技術により生まれた加工技術です。

光が当たると見事なブルーに輝く装飾的な魅力はいうに及ばず、実は耐腐食性も優れた性質をも兼ね備えていることで、超高級品であった戦前の懐中時計にも多く採用されてたことが頷けます。




青く輝く光を楽しむ

 

一見すると平に見える長短針は、立体的に湾曲しており、よく見ると光の当たる角度により針の光方にグラデーションが生じ、繊細で優雅な印象を与えているのがお分かりいただけるでしょう。

つまり、時刻を知るために時計を見た時々で、針の光り方は大きく変わり、光の向きをとらえて腕を微妙に動かすことで、針に輝くシャープなラインが針の湾曲に沿って移動する様子を惚れぼれしながら眺めることが出来るのです。

その光が走る様子は、横方向だけではなく縦方向にもお楽しみいただけるのです。





浮彫のアラビア数字の存在感

アナログ時計には不可欠なインデックス、このデラックスのインデックスは視認性の高いゴシック文字が採用されていますが、さらに、それらのアラビア数字は立体的でエッジの効いた浮彫デザインにより、その存在が強調されています。

そして、アラビア数字の表面にはダークな色合いの金メッキが施され、長年使用され渋く色づいた文字盤と共に、この個体独自の佇まいを生んでいます。

文字盤の経年による表情と腐食を最小限に保ってきた青焼針の奇跡的な美しさはこの個体でなければ味わうことの出来ない、唯一無二の世界観を作り上げていると申し上げても過言ではないでしょう。



クロームメッキにより守られてきた
ケースと竜頭

このデラックスのケースには、クロームプレーテッド、いわゆるクロームメッキが施されており、地金である真鍮を日常の使用による摩擦などから強靭に守り続けてきました。

表面のエッジ部分など、クロームプレーテッドの被膜が擦れている箇所も見られますが、大きな衝撃を受けたりすることななく、その表面は概ね美しい輝きを保っています。



ムーブメントの美しさから、 
その精度の確かさを知る

裏蓋を開けてムーブメントに目を向けると、そこには時計師だけが見ることの出来る神秘的な美しさのメカニズムが詰まっています。

直系わずか27mmほどの小さなムーブメントには時を正確に刻むためのメカニズムが、無駄なスペースの余地なく驚くべき精密さで収まっています。

そこには、飾られた美しさはなく、英国製品らしい機能美のみが存在しており、上の写真をご覧いただくと、その精度の確かさが伝わってくるのではないでしょうか。



70年の歳月が育てた佇まいと
新品当時の性能を手に入れる

この個体にしかない、長年大切に使い込まれてきた証といえる唯一無二の佇まい。

幾度もの整備を受け、正確に時を刻むスミス本来の性能を維持し続けて来たオリジナルオーナーに敬意を払い、その意思を受け継ぎ、さらなる歳月を刻むことで、さらなる奥深い味を重ねていただきたい。

ブルースチールの輝きと共に文字盤のエイジングにも魅力を感じられた方に愛していただきたい、「味わい深い1950年代のスミス デラックス」です。


もっとこの時計を知りたくなった方はこちらからどうぞ。