2023年7月16日日曜日

スミス専任時計師
ウォッチギャラリー・ビッグベアー店主
大熊 康夫のブログ

「ゼンマイを巻くこと」

  それはスミスを使う楽しみの始まり

腕時計が誕生したのは、1910年代といわれており、その当時の動力にはゼンマイが使用されていました。そして、この戦前から使われて来たゼンマイの動力による仕組みを機械式と呼んでいます。

このムーブメントの方式をスミスのほとんどの腕時計が採用しており、クウォーツや電波時計が普及している現代においても、スイスの名門時計メーカーの高級時計には趣味性を重んじて機械式が採用されているのです。

その理由は、このブログを読み進めてゆくとお分かりいただけることでしょう。



機械式腕時計の原点を搭載したスミスを使う楽しみ

スミスのほとんどが機械式時計であると申し上げましたが、多くのスミスには機械式の中でもよりシンプルな構造を持つ、いわば腕時計の原点と言える手巻の機械式ムーブメントが搭載されています。

つまり、時計の持ち主自らが指で竜頭を巻いて、動力をゼンマイに蓄えることで時計が動き出し、時を刻んでゆくのです。

そして、ムーブメントには幾つもの歯車が、それぞれの役割を担っており、指で竜頭を巻いた力が時計内部のゼンマイに蓄えられ、それがほぐれる反力で時計が動きだすわけです。

その楽しみには、クウォーツや電波時計などの電池式の時計では得られない奥深い魅力と楽しみを味わうことが出来るのです。


あなた自身の指の力が時を刻むエネルギーとなっているため、電池さえ入れておけば、放っておいても数年間は正確に動作し続ける電池式とは明らかに異なる機械式手巻腕時計との深い愛着と趣味性とが生まれ、使い込むごとに電池式にはない心地よさを育んでゆくことになります。

あなたがスミスの世界に足を踏み入れようとされたきっかけは、おそらく英国製品であることや、派手さのない上品な英国らしいデザインの素晴らしさなど英国の魅力が詰まっていることではないでしょうか。

それらに加えて使ってみることで初めて分かる、竜頭の巻心地や機械式の手巻腕時計という普遍的な機械としての魅力にも気づいていただくと、スミスをライフ・スタイルのひとつとして使いたくなる気持ちを後押しさせてくれるはずです。



竜頭の仕組みを簡単に知ることでもっと楽しく

ムーブメントの裏蓋側には、振り子を始めとした精巧な部品が正確な一秒という時間のリズムをつくり出しているメカニズムがあります。

そして、上の写真は文字盤側で、文字盤を外した状態のムーブメントです。

竜頭の軸はムーブメントの中心へ向かってふたつのギアを貫通しており、軸とギア2とは回転方向のみ固定されています。つまり、ギア2は竜頭の軸上を左右に移動することが出来ます。

写真の状態はギア1とギア2が連結されており、竜頭は押し込まれている状態で、ゼンマイを巻き上げる位置にあります。竜頭を巻くとギア2とギア1が回転し、ギア1の回転はムーブメント裏蓋側にあるゼンマイを巻くための輪列へと伝わりゼンマイを巻き上げて動力を蓄えます。

また、竜頭を引くとギア2が左へ移動し、ギア3と噛み合います。指の力はギア3へ伝わり、隣のふたつのギアを回し、長短針を動かし時刻設定を行うことが出来る仕組みです。



竜頭を巻くと、スミスと共に時を刻みたくなる

軽やかなクリック・スプリングの音色に耳を傾けながら、リズミカルに竜頭を巻き上げて行くと、すぐに振り子が目覚めて秒針が元気よく時を刻み始めます。

振り子の動作と共に聴こえてくる、1910年代から変わらぬ18000振動のチクタク・サウンドは、緻密でありながら温もりを感じさせるとてもヒューマンな音色を奏でます。

竜頭を巻き、命を吹き込んだあなたは、このスミスと共にゆっくりとした自分の時間を楽しんで行きたくなることでしょう。


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