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2022年5月29日日曜日

   スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~時計師の仕事場 #0015~

「表情を大きく変えるデュオトーン・ダイアル」 

1950年代前期のデラックス 



「光の当たり方で表情が変わる文字盤」

ほぼ完璧と言える新品当時の状態をキープしている文字盤。どちらも1950年代前期に生産された極めて美しいデュオトーン・ダイアルだが、実はこのふたつの文字盤は同じ個体を撮影したもの。

光の当たり方で、見事にデュオトーン(2トーン)の濃淡が反転しているのが分かります。また、この濃淡が反転するまでの過程には中間調がシームレスに存在し、そのデュオトーンがほぼ一色に見える瞬間も存在する。

さらに、これらのデュオトーンのコントラストの強弱も、光の強さや入射角により現れ、実に奥深い表情を見せてくれる文字盤であると言えます。



「表情の違いを楽しむ」



最もこのモデルらしいニュートラルな表情





ほぼデュオトーンでなくなったモノトーンに見える文字盤





反転して中央が濃くなった状態



表情の変化は、これら3パターンだけではなく、それぞれの中間調や、朝日、夕陽、人工光など光源の条件により無数の表情を楽しむことが出来るのです。

デュオトーン・ダイアルはデラックスの中でも、特に趣のある味わい深いモデルであると言えるでしょう。


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2022年3月17日木曜日

 スミス専任時計師のウォッチギャラリー・ビッグベアー店主、大熊 康夫のブログ

~時計師の仕事場 #0001~



「特別な黒文字盤デラックスが英国より入荷」

英国より人気の黒文字盤デラックスが入荷しました!でも、そのデラックスは、黒文字盤のデラックスをよく知る人でも、そう簡単にはお目にかかることの出来ないクロームメッキ・ケース・モデルなのです。

黒文字盤の腕時計は、個性的ではありますが、スミスの中では安定した人気のあるモデル。購入を考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

もしも、クロームメッキ・ケースのセンターセコンド黒文字盤があればな…。と、そう思っていた方には見逃せない個体と言えます。




「手を抜かないスミスのデザイン」

センターセコンド黒文字盤のふたつのデラックスは、単にケースの材質を変えただけのバリエーションに終わらず、それぞれのカラーに合わせて針のデザインやロゴのカラーを変えているところは、スミスらしいセンスであり、スキのない英国的なデザインと言えるでしょう。




「ケースに合わせた針のデザイン」

上の写真は、このクロームメッキ・ケースに合わせてデザインされたスミス純正のオリジナル3針です。長短針はクロームに、そして、秒針は差し色の赤にペイントされています。トータルバランスを考えた、飽きの来ない長く使えるスミスらしい英国的な美意識なのです。





「竜頭はスミスのデッドストックを使用」

このデラックスが、手元に届いた時は、ベルトはなく、レンズと竜頭は消耗していたため、ベルトとレンズは、純正と同じ規格の現代の製品に新品交換しました。

そして、竜頭の在庫を調べたところ、ステム(竜頭の軸)付、デッドストックの竜頭が見つかり、共にスミス純正の新品交換となりました。

スミスの外装部品は、デッドストックの在庫が極めて少ないため、購入される方は、新品当時の巻心地を体感いただけますのでラッキーですね!

上の写真は、入手が難しい、このモデル用デッドストックのスミス純正竜頭アッセンブリーです。




「特別なオーバーホールで、工場出荷時の性能を取り戻す」

ビッグベアーが販売しているスミスは、デッドストック品を除く、ほとんどの時計に対して、消耗品や、不具合のある部品の新品交換を含めたオーバーホールを行っています。

スミスは当時、日本には正規輸入されていなかったので、部品の供給は皆無と言え、専任の時計師もいませんでした。そのため、当店では英国のデッドストック部品や、スイス製のスミスに使用できる新品部品を徹底的に探し、特にムーブメントの部品に関しては充分なストックを用意しています。

それゆえに、単なるオーバーホールでは成しえない、工場出荷時の性能を取り戻すこと、そして、当時以上の長期動作保証を行うことが可能なのです。

上の写真は、分解・洗浄を済ませた部品です。各部品の細部に至るまで、不具合箇所がないか点検して注油を行い、組み立てて行きます。時計の心臓部と言える振り子アッセンブリーは、さらに分解を進め、徹底的にメンテナンスを行います。

ギアの隙間に残った汚れが、ひとつあっても、後々の精度や動作に影響するため、オーバーホール中、最も大切な作業であると言えます。




「精度は繊細な整備の積み重ねで生まれる」

上の画像にあるシャフトは、このセンターセコンド黒文字盤デラックスの秒針の軸です。上にある振り子(直径9.2mm)アッセンブリーと比較していただくと、その先端(直径0.2mm)が、いかに繊細であるかお分かりいただけるでしょう。

その先端が少しでも曲がっていれば、動作に影響を及ぼしてしまいます。




「普段は目にしないムーブメントの文字盤側」

上の写真は、ムーブメントに文字盤を取り付ける直前の状態。真鍮ダイキャスト製で、ムーブメントの剛性を保つ、ベースとなっている部分です。右側やや下に位置する複雑な形状の銀色のプレートが、スミスの欠陥パーツと言われているボルトスプリングで、新品時より5年ほど使用すると、破損してしまいます。

もちろん、ビッグベアーが開発した対策部品に交換されているので、半永久的に破損することはなく、安心して使っていただけます。





「この個体のシリアルナンバー」

写真のCで始まる6桁のナンバーは、この個体に搭載されているムーブメントのシリアルナンバーです。この番号からおおよその製造年式を知ることが出来ます。

この個体は1950年代後期の製造で、このモデルが販売されていた1957年とズレはなく、純正のムーブメントであると言えます。




「オリジナルである証」

クロームメッキのセンターセコンド黒文字盤の、このモデルは、1957年のスミス社が発行したカタログに掲載されており、そのスペックや年式などが、正しいことが分かります。